介護時代の初めてのお見送り。
介護職時代、
働いていた病棟は終末期の患者さんが多いフロアでしたが、
歩ける人、車椅子の人、寝たきりの人など様々でした。
この病棟は、高圧的だったり、性格に難ありの
いわゆる「成金系金持ち」の患者さんが多いとよく言われていました。
当時のスタッフは「ここは親兄弟の面倒を見るのが嫌な人のための介護病院」と話していました。
実際に、一部を除いて親族が面会に来ることは殆ど見たことがありません。
そんな中、私が初めて見送った患者さんは分かりやすく怒鳴る系のAさん。
脳内でクソジジイと呼んでいました。
勝手に動き回っては他の患者さんとトラブルを起こし怒鳴り散らしていましたが、
入院日以降、日に日に弱っていくのがよく分かりました。
元気がなくなって行くにつれ怒鳴ることもなくなり、私が夜勤で出勤の日に旅立っていきました。
Aさんに困らせられてばかりでイライラしたことも何度もありましたが
やはり寂しいもので、自然と涙が出ました。
簡単なお化粧と着替えを済ませると、葬儀屋さんが2人やって来ました。
手を合わせてAさんのご遺体の移動を開始。
しかしこの葬儀屋さん、2人で談笑し冗談を言いながらご遺体を扱うのです。
不信感が募って行きます。
非常に雑なのです。
たまらず文句を言いましたが、本人たちはあっけらかんとしています。
この2人、その後も何度も顔を合わせましたがいつもこんな感じでした。
葬儀屋さんがご遺族とお話をしているタイミングが私たち介護・看護との最後のお別れの時です。
鼻水を垂らしながら、最後までお世話させてくれてありがとうという気持ちを伝えました。
一緒に夜勤担当をしていた看護師さんの言葉を今でも忘れることができません。
ちなみにこの後「そのぐしゃぐしゃの顔でご遺族の前に出るなら挨拶に来なくて良いから」と冷たく言われました。鬼か。
残念ながら看護師さんの言う通り、何度も見送りをしていると実際に少しずつ業務的になっていくのです。
ただ10年以上経っても初めて見送ったAさんの顔も、見送った日の事もよく覚えています。
当時の話が出たりするとよく思い出す出来事です。
久々に思い出すとしんみりするお話でした。
HP-20